民法97条 意思表示の効力発生時期等
相手方がある意思表示の効力についての条項です。
旧法・新法の比較と、その改正内容
法律のタイトルを含め、少し改正されています(下線部)。
民法97条 |
旧法
(隔地者に対する意思表示) |
新法
(意思表示の効力発生時期等) |
1項 |
隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。 |
意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。 |
2項 |
隔地者に対する意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、又は行為能力を喪失したときであっても、そのためにその効力を妨げられない。 |
相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。 |
3項 |
なし |
意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。 |
1項
旧法では、隔地者間の意思表示の効力に限定していましたが、その限定を外して、意思表示一般につき到達主義が明記されました。
2項
相手方が正当な理由なく意思表示の到達を妨げたときの規定で、改正により新設されました。
旧法においては、以下のような裁判例が出ています。
・夫への郵便物の受領を内縁の妻が夫不在の理由で拒んだ場合、夫が単に不在がちであったというにすぎないときは、到達があったというべきである。大判昭11・2・14
・遺留分減殺の意思表示がなされた内容証明郵便が留置期間の経過により差出人に還付された場合において、その意思表示は社会通念上受取人の了知可能な状態に置かれ、遅くとも留置期間が満了した時点で受取人に到達したものと認められる。最判平10・6・11
相手方が正当な理由なく、意思表示を受領しようとしなかったときには、通常到達していたはずの時をもって、到達していたものとみなしましょう、という趣旨の判例です。
これらの判例の趣旨を明文化したのが、この2項です。
3項
意思表示を発した後に、相手方が死亡したり等して、その意思表示を受領することができなくなったときの規定です。
旧法においては、「行為能力の喪失」のみでしたが、新たに「行為能力の制限」も加えられました。
結論・影響
不要な文言を削除し、判例の趣旨を明文化し、不足していた文言を加えた改正に留まっているので、実務・社会生活には特に影響はない改正だと思います。
平成30年1月17日